社内恋愛発令中【完】
《お出口は右側です》



最寄り駅に着き、扉が開く。



不安を掻き消すように早足で電車を出た。



最寄り駅からそれほど遠くない家までの道が、今はとても長く感じる。



街頭が少ない帰り道で、全神経が後ろの気配に集中していた。



自分のヒールの音だけが夜道に響き、たまに風の音と、遠くで聞こえる車の音。



ついてくるような足音は聞こえない。



ふう、と安堵の溜め息を漏らし、上がっていた肩を降ろした。



と____



カサッ



何かを踏むような音が背後で聞こえた。



ギョッとして足を止めそうになるが、なんとか持ち堪える。
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