社内恋愛発令中【完】
ただのイタズラで、人を怖がらせるのが目的なんだ。



そう言い聞かせて靴を履き、ばら撒いてしまった写真をとりあえずバッグに押し込み外に出た。



汗を滲ませる初夏の空。



そんな空気をいっぱいに吸い込んで、無理矢理にでも気持ちを入れ替える。



そうでもしなければ、心が折れてしまいそうだったのだ。



きっと大丈夫。



遥さんも大丈夫って言ってくれる。



あたしに元気がなかったら、そんなのあたしじゃない。



パンッと頬を叩くと、少しだけ気分が楽になる。



こんなに清々しい日にしおれていられない。



いつかきっと何も無かったような日が送れる。



そう考えることにして、夏の空の下、駅までの道を歩いた。
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