社内恋愛発令中【完】
クスクスと笑う蒼井さんだったが、その笑顔を素直に優しい顔だと思えなくなってしまった。



どこか裏があるような、表の笑顔だと。



「双葉さん?行きますよ」



「は、はい!」



いや、第一印象の人が好すぎたせいだ。



蒼井さんが優しい部長だってことに、変わりはない。



はず。



「今まで痴漢にあったことは?」



駅までの夜道、蒼井さんはあたしに歩幅を合わせて歩いてくれる。



「今日が初めてですよ!ち、痴漢なんてされるような体でもないですし…」



ブツブツと語尾の方を小さくするように呟くと、蒼井さんはプッと吹き出した。



「痴漢する側からしたら、触れればどんな体でもいいんだと思いますけど」
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