社内恋愛発令中【完】
「えぇ?」



疑うように蒼井さんを見上げると、目だけをこちらに向けた蒼井さんと目が合う。



反射的に目を伏せてしまった。



「そ、それより、いいんですか?送ってもらっちゃって」



「同じ会社で働く人は、全員家族だと思ってますので」



絵で描いたような綺麗な笑顔を浮かべる蒼井さんは、あたしも家族だと笑う。



どうしてか蒼井さんの目を見て笑えない自分。



(やっぱり、さっきの電話がきいてるなあ…)



蒼井さんの裏の性格を見てしまったような、見てはいけないものを見てしまったような、そんな気分。



「双葉さん、なんか元気ないみたいですけど…」



なかなか下手くそな笑顔を浮かべるあたしを、蒼井さんが覗き込む。
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