社内恋愛発令中【完】
そう聞かれ、一瞬言葉に詰まる。



(今日は特別なんだけど…)



「…と、ときどき」



答えると、蓮也さんは疑うこともなく頷いてくれた。



「そうなんだ。…そういえば詩苑ちゃん、1人暮らしだったよな?」



と、いきなりそんなことを問う蓮也さんに、首をかしげながら返事をする。



「そうですけど…どうしてです?」



「今日一緒に夕飯でもと思って」



屈託のない笑みを浮かべる蓮也さんに、あたしはどう言うべきか焦ってしまう。



行けないなら行けないなりの、理由を考えなければならない。



今日は蒼井さんの家に泊まるからなんて、口が裂けても言えない。



借りにも蒼井さんは部長という立場だ。
< 240 / 355 >

この作品をシェア

pagetop