社内恋愛発令中【完】
すぐ後ろで蒼井さんの声が聞こえる。



「な、ちょ、蒼井さん…っ」



お皿とスポンジを持った手はそのままに、お湯も出続けている状態だ。



キッチンに手をつく蒼井さんの手が、あたしのお腹の前でクロスされた。



「蓮也だけ名前って、ちょっとずるくない?」



「ち、近い…!」



きっと蒼井さんには、心臓の音が聞こえてしまっている。



脈と一緒に体が揺れてしまうほど響いているのだから。



「蓮也のキスは嬉しいみたいだし」



「な、なな、何言って…っ」



耳元に蒼井さんの吐息を感じた。
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