社内恋愛発令中【完】
涙が浮かぶのを堪えながら蒼井さんを見上げた。



蒼井さんは、そんなあたしを見下ろして困ったように笑う。



「そんな顔されたら、忘れようにも忘れらんないだろバカ」



「…?」



「やっぱり、メガネがない方が可愛いよ」



お風呂に入りメガネを外したあたしに、蒼井さんはそんなことを言う。



またからかわれている、と分かっていても恥ずかしくなってしまって悔しい。



「み、みんなに言ってるくせに…っ」



と、言った瞬間、心なしか雰囲気が変わった気がした。



空気が張り詰めるような、言ってはいけないことを言ってしまったときの雰囲気だ。



蒼井さんが黙ったまま何も言わない。



下に向けていた顔を、恐る恐る上げてみた。
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