社内恋愛発令中【完】
余裕がなければできないことだと思う。



あたしは悔しい気持ちを抑えきれず、つい口走る。



「あたしがいくら想っても、蒼井さんにとっては慣れた女の1人でしかないんです」



自分が今なにを言ったのか理解できていないまま、心の声を口に出した。



「だったらいっそ、あたしのことは放って___」



そこまで言ったとき、蒼井さんがあたしの顎をクイッと持ち上げた。



「もう黙って」



あたしが再び言葉を発する前に、その口は蒼井さんに塞がれる。



キスされていると気づくまでに数秒がかかった。



目を見開き驚くあたしの口の中へ、何やら生温かい液体。



「!?」



鼻の奥に広がるアルコールの匂い。
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