社内恋愛発令中【完】
蓮也さんには見つかるまいと、あたしは化粧品の台に身を隠す。



蓮也さんはあたしに気づくはずもなく、蒼井さんと逆方向へと走って行った。



あたしはそれを見届けると、蒼井さんの走って行った方へ向かう。



どこへ行ってしまったのか、この広いショッピングモールでは何の手がかりも見つかりそうにない。



親子やカップル、兄弟や友人。



これほど人が集まる場所で、1人を探すなんて、お互いに不可能なんだ。



(蓮也さんも何考えてるんだろ…)



蓮也さんは仕事が早くて、部下に優しい。



とてもかっこよくて、冗談が通じるのに、やるときはやるような上司。



あたしはそんな蓮也さんを尊敬している。



でもあたしの尊敬してる蓮也さんと今の蓮也さんは別人だ。



何を考えているのか分からない。
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