社内恋愛発令中【完】
「いつも…いつも蒼井先輩には勝てない」



目線を下に向け、やるせない気持ちを嘲笑うかのように。



「昔から、恋愛もレギュラーも部長が一歩前で、俺はいつも部長の後ろで」



どう声をかければいいのか分からなかった。



気を遣った言葉は、蓮也さんを傷つけてしまうようで怖かった。



「詩苑ちゃんだけは…って、思ってたんだけどなあ…」



あたしに視線を移したその表情、切なくて苦しくて、寂しくて悲しくて仕方ないと叫んでいるようだった。



揺れるその目に、あたしが小さく映る。



「いつもゴール決めるのは先輩だよ」



「…あたしは、蓮也さんと蒼井さんの2人を比べてるわけじゃないです」



気を遣った言葉より先に、思ったことを口走っていた。



気を遣った言葉より、蓮也さんが傷つくかもしれない言葉だ。
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