社内恋愛発令中【完】
その笑顔を見て、釣り上げていた眉を下げる桜瀬さん。



誰かの笑顔は誰かを幸せにするんだなあ、としみじみ。



「それで、双葉さんに何か用だったんですか?」



桜瀬さんがあたしを横目で見ながら蒼井さんに問う。



蒼井さんは首を横に振って



「いや、困ってるのかなって思って声をかけただけですよ。では、あとは頼みます」



頭を少し下げると、コーヒーを飲みに行ってしまった。



「よかったです、部長と長い時間行き違いにならなくて」



蒼井さんの背中を追っていた視線を桜瀬さんに移し、ニコリと笑う。



「ここに来るって、知ってたわけじゃないよね?」



「…え?」



だけど桜瀬さんからは、いつもの優しい笑顔が消えていた。
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