社内恋愛発令中【完】
「双葉さんって、部長と知り合いだったの?」



初出勤のことだろう。



あたしと蒼井さんは、もともと知り合いだったかのような会話を確かにしていた。



あたしは両手を前で振りながら早口で説明をする。



「あ、あの日、電車でち、痴漢にあって、そのとき助けてくれたのが、偶然部長だったんです…」



「痴漢?」



どうしてだろう。



あたしを見下ろす桜瀬さんの顔を見ることができない。



「はい…」



「本当に?」



「も、もちろん本当です…!」



うんうんと光の速さで頷くあたしを見て、桜瀬さんは安心したかのように表情を緩めた。
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