社内恋愛発令中【完】
(痴漢…!?)



チラッと自分の足元を見てみる。



「…な…」



確かに誰かの手が、自分の太ももを這うように動いているのが見える。



足を動かし、できるだけその手を払おうとするが、その手は何度でもくっついてくる。



手を使いたくても、人が多すぎて動かせる余裕はない。



「…っ」



その手の主を睨みたくても、どの人がその手の主なのか見当もつかない。



あと少しの辛抱、そう思っていても、その手は少しずつ上がってくる。



目を瞑って駅の到着を待とうとしたあたしの横で



「あの」



低く、響く声がした。
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