社内恋愛発令中【完】
「桜瀬さんに何か…?」



聞くと蒼井さんは、ハハと苦笑いをして言う。



「パソコンに移してほしい資料があってですね…」



「移す?」



「15枚にまとめられた資料を、そっくりそのままパソコンに打つんです」



内容を聞いて、自分にもできそうだと一瞬思う。



だけど桜瀬さんに頼もうとしている仕事ということは、あたしにはできない仕事ということではないだろうか。



やります、という言葉を言えずに飲み込む。



「明後日までなんですけど…」



困ったな、と頭をかく蒼井さん。



自分の口がモゴモゴしてしまうのを抑えるあたしは、昔から変わってない。



いつだってそうだった。
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