太陽に愛された向日葵
「ソファ倒しますね」
ゆっくり体ごと後ろに倒れる。
どこ見ていいかわかんなかったから目を瞑った。
シャンプーは、めちゃくちゃ気持ちが良かった。
やっぱり手つきがプロだ。
わたしはそんなに美容院行ったことないから
下手とか上手いとかわからないんだけど
気持ち良かった。うっかり寝るとこだったから。
頭にタオルを巻いてもらい、てっきりすぐにまた
さっきの施術スペースに戻るもんだと思ってたら。
わたしの前で目線を合わせるようにしゃがんだ神野さん。
眉毛を下げながら、自信なさげに口を開いた。
「俺のこと…覚えてない、よね?」
………えっ?
思考が停止した。
こんなイケメン会ったら忘れるわけないと思う。
それとも、ずいぶん昔とか。
小さい頃とかだったら覚えてないけど。
神経の回路を必死に張り巡らせるけど、
こんなイケメンはどこにも見当たらないし見覚えもないし、初対面だ。
何分か待たせていたけど、その間ずっと彼はわたしを見つめて黙って待ってくれていた。
「あの…人違いだとおもいますけど」