太陽に愛された向日葵


「ソファ倒しますね」


ゆっくり体ごと後ろに倒れる。

どこ見ていいかわかんなかったから目を瞑った。








シャンプーは、めちゃくちゃ気持ちが良かった。

やっぱり手つきがプロだ。


わたしはそんなに美容院行ったことないから

下手とか上手いとかわからないんだけど

気持ち良かった。うっかり寝るとこだったから。






頭にタオルを巻いてもらい、てっきりすぐにまた

さっきの施術スペースに戻るもんだと思ってたら。




わたしの前で目線を合わせるようにしゃがんだ神野さん。

眉毛を下げながら、自信なさげに口を開いた。




「俺のこと…覚えてない、よね?」





………えっ?






思考が停止した。


こんなイケメン会ったら忘れるわけないと思う。

それとも、ずいぶん昔とか。

小さい頃とかだったら覚えてないけど。





神経の回路を必死に張り巡らせるけど、

こんなイケメンはどこにも見当たらないし見覚えもないし、初対面だ。



何分か待たせていたけど、その間ずっと彼はわたしを見つめて黙って待ってくれていた。





「あの…人違いだとおもいますけど」






< 8 / 20 >

この作品をシェア

pagetop