それでも僕らは恋と呼ぶ。
「どうしたの? チャリ乗らないの?」
「っ・・・乗るよ」
オレは佐野の隣まで行くと、自転車にまたがる。
でも、なんだか顔を見ると少し罪悪感があって顔を見ることができなかった。
佐野が漕ぎ始めたから、それにあわせてオレもペダルをこぐ。
冷たい風が、頬をかする。
夜の暗さも風の冷たさも、今の季節だからしょうがない。
「あぁ、やっぱり寒いな」
「そうだね。でも、私、冬って好きだよ」
「うーん。まぁ、こたつに入ってあったまるのは好きなんだけどさ」
家に帰ったらオレを待っているこたつを想像して、いっそう外の寒さに震えた。
「冬の空って一番綺麗じゃない?」
「うーん。あんまり違いが分かんないけど」
「棗くんは不精だね」
「そんなことないよ。むしろ佐野が上ばっかり見すぎなんだよ」
「失礼だね。だって、オリオン座もあるし、私の星座もあるし」
「佐野って、水瓶だっけ?」
「うん。2月生まれだから。だから・・・2月って好きなんだ」
少し言いにくそうに佐野はそうつぶやく。
その表情の変化に気づいたものの、なんでそうなるのかという結論までは至らなかったオレである。