Last Letter~手紙がくれた想い~
「長瀬さん…ちょっといいですか??」
点滴の交換を終えた長瀬さんに声をかける。
『大樹くん?どうしたの??』
振り向いた長瀬さんは首を傾げる。
「1つ、質問してもいいですか??」
長瀬さんが頷いたのを確認して俺は口を開く。
「どうして悠香は手術しないんですか?」
ずっと、疑問だった。
末期の癌なら胃を摘出すればいいだけなのに。
どうして手術をしないんだろう…って。
ずっと、考えていた。
『大樹くん』
俺の名前を呼んだ長瀬さんの顔つきは真剣で。
ドクドクと心臓が音をたて始めた。
『悠香ちゃんの癌は、いろんな臓器に転移してる。
だから胃だけを取り出したって意味がないの
分かるかな…??』
俺は首を横に振った。
「胃だけでも取り出したら、悠香は楽にならないんですか?!」
気づいたら、長瀬さんに怒鳴っていた。
八つ当たり…これは、八つ当たりだ。
悠香が元気になってくれなくて。
俺に笑いかけてくれなくて。
そういうのが全部、淋しくて、悔しくて。
長瀬さんに八つ当たり…してしまった。