Last Letter~手紙がくれた想い~
「お前も、いろいろ大変なんだな。」
こういうとき、気の利いた言葉でも言えればいんだろう。
でも、俺はそんな格好いい男じゃない。
それにこんな雰囲気の経験なんてしたことなくて、
バカみたいなことしか言えなかった。
『あんたも…苦労してんの??』
俯いたまま、絞り出すような声で村瀬は言う。
「お前ほどじゃないかもしんねぇけどさ。
あ、これ弘斗にしかしてない話なんだから内緒にしろよ。
俺の母親、夜の仕事してんだ。
だから朝方帰って来て、俺とか弟たちが学校から帰ってくる時間に家を出る。
それでな、俺は母親の代わりに弟2人の面倒みてんだ。
料理とか、掃除とか、洗濯とか全部俺がやってさ。
なんか、笑えるだろ?
健全な高校3年、18歳がさ、
小3の双子の弟2人の面倒見て、
親の代わりに家事するなんて。」
あ~ぁと、言って俺はベンチの後ろに手をつく。
俺、やっぱり悠香に逢ってからおかしくなってないか?
こんなこと、弘斗以外に話すつもりなかったのに…
『確かに木村のイメージと違う。
家でずっとギターか勉強してると思ってた。』
村瀬はクスッと笑う。
「笑うなよ」
やっぱり、こんなこと話すべきじゃなかった。
と、後悔した俺だった。