死神喫茶店
あたしは解体部屋にあるシャンデリアを思い出してそう言った。


河田さんは好きな女性を解体している。


そのショックは相当大きいだろうし、今恋人がいるという話は聞いたことがなかった。


楓の事は良く思っているみたいだから、もしかしたら次の恋人は楓になるかもしれない。


「いないの? それならっ……」


楓はそこまで言い、顔を赤くして息を吸い込んだ。


自分にもチャンスがあるかもしれない。


その思いにときめいているのだろう。


「楓なら、うまく行くかもしれないね?」


あたしはそう言い、空になったグラスに視線をやった。


あたしはどうなんだろう?


みんなが幸せになればいい。


そう感じたとおりに動き始めている。


だけど、あたし自身の幸せは一体どこにあるんだろう?


瑠衣への気持ちを封じ込めてしまったあたしは、それすらわからなくなっていたのだった。
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