死神喫茶店
☆☆☆

学校でも勉強ができる方の楓はもの覚えがよかった。


コーヒーの淹れ方も、レジの打ち方も、メモを取りながらだけれどすんなりと覚えていく。


簡単な料理ならレシピ通りに作れば問題ないし、教える事に不安があったあたしもすぐに安心することができた。


「『ロマン』の開店前の仕事は一通り終わりだよ。あとはお客さんが来るのを待って、実際料理やコーヒーを淹れてみればわかってくるから」


開店の看板を表に出した楓がホッと息を吐き出す。


「バイトって想像以上に大変だね」


「そう? すんなり覚えてたじゃん」


「今はモコが一緒にいてくれてるからできるけど、1人になった時にできるかどうか不安だなぁ」


確かに、1人になった時のことまで考えると不安になるだろう。


あたしも河田さんが教えてくれなくなった時は少し緊張したのを覚えている。


「大丈夫だよ。あと何回かは一緒にバイトに入るし、わからない事は河田さんがちゃんと教えてくれるから」


特に楓には優しく教えてくれるだろう。


「うん。頑張るよ」


楓はそう言い、カウンターへと戻ってきたのだった。
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