死神喫茶店
のこぎりで切られているのにマッサージとは、予想外の反応だ。


でも、そのおかげであたしの気分もほぐれていた。


「ありがとうございます。痛いって言われたらどうしようかと思ってました」


「感覚はとっくに死んでいるから大丈夫だよ。ただ、なんていうのかな? 解体が進むにつれて眠くなるような、心地よさに包まれていく感じなんだ」


その言葉にあたしは頷いた。


どの『お客様』もそのようだ。


自分の魂が成仏していく時に心地よさを感じている。


成仏そのものが苦痛にまみれたことだったらここに来てくれる『お客様』は1人もいなかっただろう。


あたしは『お客様』の腰から下を切り離した。


「眠ってもいいですよ?」


「ありがとうそう言ってもらえると……安心して……眠れる……」


『お客様』の声は徐々に小さくなり、そして途中で消えて行った。


あたしはそっと息を吐き出し、そして気合を入れ直した。


『お客様』は眠ってしまったけれど、解体はまだ終わっていない。


あたしはのこぎりを『お客様』の首に当てたのだった……。
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