死神喫茶店
しかし楓は「あたしは大丈夫だからね?」と、言ってきたので安心する事ができた。


「そっか、それならよかった」


「まぁ、少しは気分が悪くなったけど、モコがグロテスクな映画を平気で見てる理由もわかったし、あんな秘密の部屋を教えてもらえてとても嬉しかったんだよ?」


確かに、あの部屋へ入れられると自分は特別になったんだと感じる事ができるだろう。


解体部屋は河田さんが信用している人間しか出入りできないのだから。


それは楓にとってとても嬉しい出来ごとだったようで、血まみれの『お客様』を見た時のショックも和らいだのだそうだ。


それから2人で『ロマン』の話をしながら教室のドアを開けると、舞美と冬が一緒にしゃべっているのが見えた。


2人の頬はいつもよりピンク色になっているのがわかる。


その光景に一瞬で昨日の告白の結果が理解できた。


舞美の気持ちは冬に届いたんだ……。


嬉しいはずなのに、どこか心に穴が開いてしまったような切なさを感じる。


舞美も楓も、そして夢羽も自分の相手をちゃんと見つけている。


あたしだけ、1人ぼっちだ。


「モコ、どうしたの?」


教室の入り口で立ちつくしているあたしに楓がそう聞いて来た。


「……楓、ごめん。今日はやっぱり早退するね」


そう言うと、自分のカバンを変えでから受け取り、逃げるように教室を出たのだった。
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