死神喫茶店
しかし、2人の体からただよう悪臭は周囲のクラスメートも気がつくほどで、瑠衣と夢羽を見て顔をしかめはじめた。


「2人とも、ちょっと話がある」


いてもたってもいられなくなって、あたしは2人の腕を掴んで立ち上がらせた。


2人は困惑した表情を浮かべながらも、あたしの手を振りほどこうとはしない。


教室を出てそのまま一気に階段を駆け下りる。


担任の先生とすれ違い何かを言われたけれど、それにも返事をせずに下駄箱まで来ていた。


ここまで全力で走って来たと言うのに息を切らして額に汗を滲まているのはあたし1人で、瑠衣も夢羽も全く呼吸を乱していなかった。


あたしは夢羽の頬を両手で包み込み、指先で呼吸を確かめた。


「息……してないじゃん……」


あたしはそう呟き脱力したように夢羽から手を離した。


「ごめんねモコ。ビックリさせちゃって」


「……2人とも、死んじゃったの?」


そう聞く自分の声が細かく震えている。


「半年前に」


瑠衣にそう言われ、あたしは愕然としてしまった。


半年前?


半年前にすでに2人は死んでいた?


「そんな……」


瑠衣の言葉を否定して笑おうと思ったが、できなかった。


魂の強さによっては腐敗をも防ぎ、10年間生き続ける。


河田さんのそんな言葉を思い出してしまったからだ。
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