死神喫茶店
黒いフカフカのソファ。


しかしこの毛は人間の毛を再利用して作ったものなのだ。


ゾンビになった人間を忘れないための品の1つ。


この部屋の床に引かれているマットも、人間の皮をはいで乾燥させ、それを何枚にも縫い合わせた物だ。


壁掛け時計の長針と短針はどちらも人間の足の骨を使っているし、シャンデリアとしてぶら下がっているのは綺麗に磨いた指の骨と、腐敗を防ぐ薬品を使った小腸だ。


『ロマン』で使う消耗品が置かれている棚の中にも、沢山の人間の部位が並べられている。


普通なら見ているだけでも気持ちが悪くなるような部屋だ。


あたしはグルリと室内を見回し、そして河田さんへ視線を戻した。


店長はこうして眠っているし、無理に起こすのもなんだかかわいそうだ。


今日『ロマン』は休業と言う事でいいんだろうか?


『ロマン』は一応年中無休という形で営業をしているのだけれど、あたし1人で勝手に開けるわけにもいかない。


たまには夜ものんびりすればいいかもしれない。


そう思い、あたしはそっとドアに手を伸ばした。
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