死神喫茶店
しかしあたしはせわしなく解体部屋を見回して、拳を作ったり広げたりを繰り返した。


心なしか酸素が薄い気がする。


あたしが緊張しているせいかもしれない。


「モコちゃん。俺はもう……」


「き……今日はとてもいい天気ですね!!」


いつも掃除なんてしない河田さんが解体部屋と『ロマン』をピカピカに磨き上げていた。


「あ、明日もきっといい天気! そうだ! あたし、明日は河田さんにクッキーを作ってきますよ! だってあたし、もうすぐ辞めるんだし!!」


わざと大きな声で、河田さんの言葉をかき消すようにそう言った。


河田さんは無言のまま振り向いた。


その表情はとても切なげで、あたしの胸は一瞬にして凍り付いた。


何か言わなきゃ。


別の話題を持ち出して、河田さんに喋る隙を与えないようにしなきゃ。


じゃなきゃ……あたしはすべてを知ってしまうことになる……。


「辞めるなんて許さないよ」


切ない声で、小さな声で、河田さんはそう言った。


「俺がモコちゃんに解体の仕事を教えた理由を、もうわかってるんだろ?」
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