死神喫茶店
給料日
数週間後。


河田さんが作ってくれた鞄は薄ピンク色に染められて、とても可愛らしいバッグになっていた。


人の皮膚からこんな素敵なものが作れるなんて、きっと誰も想像していない事だろう。


この鞄を作るために女性用のファッション誌を購入し、どんなバッグが流行っているのか勉強したらしく、その姿を想像すると少しだけ笑えた。


ただ、人皮バッグに欠点があるとすれば少し重たいという点だった。


それは解体されて『お客様』の記憶が皮膚に宿っているからで、その記憶は徐々に薄れ、バッグ自体の重さもだんだん軽くなっていくと、河田さんは言っていた。


人間の体にその人の記憶が宿っている。


だからこそ、河田さんは解体いた『お客様』の体の一部を再利用して置いているのだと、納得のできた。


河田さんはきっと『お客様』たちを忘れたことは1度たりともないのだろう。


口には出さなくても、きっとそういう人だ。


あたしは河田さんの作ってくれたバッグに貴重品を入れて自転車をこいでいた。


今日は日曜日で学校は休み。


給料日なので『ロマン』まで取りに行くのだ。


振込みにしてくれれば楽なのだけれど、あたし1人のアルバイトの為にわざわざ街中の銀行まで行ってもらうのも申し訳なく、こうして自分から出向いているのだ。
< 31 / 193 >

この作品をシェア

pagetop