死神喫茶店
河田さんもまた、シャンデリアに視線をやったままで答えた。


「とても綺麗な女性だったよ」


昔を懐かしむようにそう言う河田さんに、あたしは違和感を覚えた。


とても綺麗な女性。


そう言いきれると言う事は『お客様』の腐敗がほとんど進んでいない状態で解体した。


もしくは、『お客様』がゾンビになる前から知っている人だった。


そのどちからだった。


そして河田さんの今の発言からすると、後者の方が当てはまるのではないかと思った。


「……恋人だったんですか?」


小さな声でそうきいた。


聞き取れなかったならそれでいいと思ったのだが、河田さんの耳にはちゃんと届いていたようだ。


「いや、恋人にはなれなかった。でも、好きだったよ」


「告白はしなかったんですか?」


あたしはようやく河田さんの横顔を見た。


目を細め、ジッとシャンデリアを見つめている。


「イトコだったんだ。告白したくても、どうも抵抗があってね……」


河田さんはそう言ってあたしを見て、そして照れたように頭をかいた。
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