死神喫茶店
少年は河田さんに促され、ベッドへと寝転がった。


「それじゃこれから解体していくけど……」


そこまで言い、河田さんは言葉を切った。


ジッと少年の手元を見つめている。


「どうしたんですか?」


隣から覗き込んでみて、ハッと息を飲んだ。


少年の右手の小指がないのだ。


それだけじゃない。


靴を脱いだ少年の足の指も、左右合わせて3本しかないのだ。


そこだけ先に腐って落ちたなんて考えにくい状態。


あたしと河田さんは一瞬顔を見合わせた。


この『お客様』は普通じゃない。


「君、口の動きは読めるかな?」


河田さんがゆっくりとした口の動きで少年にそう聞いた。


少年は戸惑ったような表情を浮かべて「少し、わかる」と、頷いた。


生まれつきの障害であれば手話を習っていたり、口の動きが読めたりする。


でも、少年の場合は手話をしようとしないし、口の動きもしっかりとは読めていない。


つまり、これは生まれつきの障害ではないということだ。
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