死神喫茶店
河田さんはそっと少年の耳のあったであろう場所に触れた。


少年はビクッと身を縮め、少し間を開けてからゆっくりと目を開けた。


自分の身を守るための条件反射。


「虐待……」


あたしは小さく呟いた。


河田さんが無言のまま頷くのが横目で見えた。


「これから解体をする」


河田さんが抑揚のない声でそう言った。


「待ってください! この子、明らかに虐待を受けてますよね!? 死んだ原因も、虐待が原因かもしれないじゃないですか!」


少年は『土の中』という言葉を口走っている。


普通に埋葬された死体なら、その時に虐待や事件性を問われるだろう。


だけどそれがないということは……この子は殺され、そして犯人の手によって土に埋められていた可能性があるのだ。


土の中で魂が抜けることもできず、どうにか自分で這い出してここへたどり着いた。


それくらいのこと、河田さんでも理解しているはずだった。
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