死神喫茶店
「そう。彼が殺されたのも、もう10年も昔の事というわけ」


「……そうなんですか……」


「事件性のある『お客様』は数多くいる。ほとんどがこっちの思いすごしだと思うが、彼のように本当に事件が起こっていたケースもある。でも……どんな状況でも、解体するのが俺の仕事だ」


「……わかっています」


あたしはコーヒーに視線を落とした。


河田さんが言いたいことは理解している。


『お客様』が解体を望んでいる限りそれを行わなければならないし、自分の感情だけで事件に足を踏み入れるようなマネはするべきじゃない。


事件に首を突っ込んで何かが起こっても、責任をとることもできない。


「モコちゃんは俺が思っている以上に大人だね」


不意にそんな事を言われて、あたしは河田さんを見た。


河田さんはさっきまでの難しい表情ではなく、柔らかなほほ笑みを浮かべている。


その笑顔を見ていると途端に恥ずかしくなり、あたしはまた視線をそらせた。
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