死神喫茶店
一緒に眠る
死んでも10年間生き続けた少年。


河田さんの話では、魂が強く体と結びついていたのが原因なのだとか。


だとすると、自分が死んだことにすら気が付かない人もいるのではないか。


そんな質問をしてみると、河田さんは冷静な表情で頷いて「いるかもしれないね」と、答えた。


自分が死んだと気が付かないゾンビたちは、解体を頼ってくることもない。


腐敗していく自分の体に疑問を感じながら腐って落ちていくのだ。


それを想像すると心の中が悲しみに満ちていくのがわかった。


もしかしたらこの島の中にはそんなゾンビたちがまだまだいるのかもしれない。


家に帰る途中の繁華街で周囲を見回して、そんな事を考える。


ふと通行人の男性と目が合い、あたしはすぐに自転車の速度を上げた。


あの人も、この人も。


生きているのか死んでいるのかもわからない。


なるべく周囲を見ないようにして自転車をこぎ、家まで帰った時には呼吸が乱れていた。


額に滲んだ汗を手の甲で拭い、家に入る。


見慣れた家に戻ってきてもまだ落ち着かず、リビングが明るい間に手早くシャワーを浴びた。


「今日はなんだかバタバタしてるけど、どうかしたの?」


リビングでテレビを見ていたお母さんにそう聞かれて、あたしは曖昧にほほ笑んだ。
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