死神喫茶店
「汗をかいたから、早くシャワーをしたかっただけだよ」


「そうなの?」


娘のちょっとした嘘を見抜いているのか、その表情は疑っているように見えた。


「ねぇ、お母さん……」


「どうしたの?」


「今日、一緒に寝てもいいかな……」


あたしの言葉にお母さんは驚いたように目を丸くした。


高校生の娘がお母さんと一緒に寝ていいかと聞くなんて、想像もしていなかったんだろう。


でも、万が一自分が眠っている間に死んで、自分が死んだこと気が付かず10年も生き続けたとしたら?


そう考えると、1人で眠ることさえ怖くなってしまったのだ。


両親と一緒に眠れば、途中でお母さんがあたしが死んでいる事に気が付いてくれるかもしれない。


そんな事、絶対に言えないけれど。


お母さんは呆れた顔を浮かべて「仕方ない子ねぇ」と、言ったのだった。
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