死神喫茶店
いちばん恋愛に興味が出て来る時期に自分だけのけ者にされている気分なのだそうだ。


「あたしも、今は失恋中」


そう言って、あたしは楓の体にもたれかかった。


瑠衣と夢羽は相変わらず仲が良くて、今も2人で冬を囲んで話をしている。


「あたしは失恋もした事がない」


楓はそう言い、更に表情を歪めた。


「何か楽しい事を探せばいいと思うけどなぁ」


ダラダラとマイナスな事ばかり話をしているあたしと楓に、舞美がそう言った。


「楽しい事?」


楓が聞き返す。


「うん。たとえば趣味を増やすとか、部活やバイトをしてみるとかさぁ」


舞美がそう言うと、楓がふいにこちらへ視線を向けて来た。


「な、なに?」


あたしは楓から離れて首を傾げる。


楓はうっすらとほほ笑みを浮かべていて、あたしを見る目には好奇心をたたえている。


「バイト! モコのバイト先の『ロマン』に連れて行ってよ!」


思いがけない言葉にあたしは瞬きを繰り返した。


楓が『ロマン』に来ることは一向にかまわない。


でも、客数が少ない『ロマン』に来たってバイトができるのはおもえなかった。
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