太陽と月の後継者








「あーっ 来た来た!今日の主役っ」


クロエを呼ぶのは真っ赤な髪を後ろでポニーテールしている元気な女の子だった。


『初めまして、今日からよろしくね』


「こちらこそよろしく。それじゃあ早速、新入生挨拶お願いなっ」


『うん』


そう、クロエは入学試験を主席で合格している。しかも、世界随一の魔法学校へだ。


記憶のないクロエは生まれて5ヶ月のようなものだが、本当に素晴らしい進歩である。


学園の中央のバルコニーへ踏み出て、周りを見渡す。それまではざわざわしていた会場が一気に静かになった。


その場すべてが彼女に魅了されていく。


『暖かい日差しが____________』


透き通るような声ですらすらと難しい言葉を
並べていった。


『新入生代表 クレア・フルーム』


クレア・フルーム


それは仮の名


誠の名はこの世界に知れ渡っているから名乗れない。そして彼女に苗字は存在しない。


“クロエ”


この世界に、その神聖な名を知らないものはいない。

代表挨拶を終えたクロエは、いち早く教室へ向かう。彼女のクラスはSクラス。将来有望な、最も魔力が強い者達が集まるクラスだ。


S、A、B、C
の4つのクラスで学園は
構成されていた。


『楽しみ』


クロエは子供のように無邪気な笑顔を浮かべて、教室へ歩いていた。


「クーレアッ」


『!』


「ごめんっ 私もSクラスだから一緒に行こうと思って…びっくりさせちまったな。」


(さっき私をステージに案内してくれた子だ。)


「私はレイ・ニコラス それにしても、綺麗な髪だなっ」


『あ、ありがとう』


褒められることに慣れていないクロエは頬を赤くする。そんな男子なら目が釘付けになるほどの可愛らしい様子を見てレイは先行きが不安になり、

「クレア、あんた気をつけなよ。」

と、苦笑いで告げたのだった。

< 10 / 220 >

この作品をシェア

pagetop