太陽と月の後継者
大きな泉に太陽の光が反射して、龍鬼族の屋敷を照らす。
鳥の囀りと、少し離れたところにある世界一大きな滝の水音。
『流石、水の部族…』
「こっちよ。」
ビアンカに手を引かれて、屋敷の門前に来た。
「悪魔族令嬢のビアンカ。こちらはクレア・フルーム、上級魔法使いよ。」
見張りの兵は、悪魔族と聞いて道を開いた。
まるで、神殿のような造りだ。
屋敷の中庭らしきところには、立派な噴水と美しい花が咲いている。
「ようこそ。ビアンカ、そしてクレアさん。」
中から出てきたのは、艶やかな腰までの黒髪と深い蒼い目、陶器のような美しい肌をした女性と、群青色のハーフアップした髪と深い蒼い目の青年だった。
「お久しぶりです。蓮様、瑞(スイ)。」
珍しい名前のふたりはなんとも言えない美貌を秘めていた。
蓮レンとよばれる女性は、世界でも絶世の美女と名高く、穏やかで品のあるそして強い女性だ。
瑞は蓮の弟で魔法や武術に関しては国王軍の騎士長にも劣らないと言われている。
『初めまして』
クロエが挨拶をすると、蓮が首を横に倒す。綺麗な長い髪がさらりと揺れた。
「あら、噂には聞いていたけれど。
とっても綺麗で可愛い子ね。
瑞はどう思う?」
「はい、とても綺麗です。」
瑞はにこやかに答える。
クロエは恥ずかしくなり、頬をかいた。
「今日はお話があって伺いました。」
「ふふっ、ビアンカったら。
そんなに堅苦しくなくていいのよ。」
「…わかったわ。じゃあ、早速本題に入らせてもらうわね。」
応接間のような所にクロエ達は案内されて座る。
「久しぶりのお客様ね。
紅茶はいかが?」
「…姉さん。」
「まぁ、ごめんなさい。
話を聞かせてもらえる?」
見かけによらず蓮は
お茶目で可愛らしい。
そんな姉にいつも
苦労しているのが弟の瑞だ。
「火の部族のことを知っているわね。」
蓮と瑞はビアンカの一言で一気に仕事モードに入れ替わる。
「ええ、もちろんよ。」
「私達は朱雀族の暴走を止める義務があるわ。
…協力をして頂けませんか。」
蓮は立ち上がる。
「少し、外に出ない?」