太陽と月の後継者
『学園のよりもかなり広い…。』
呆然と立っていると、剣の抜く音が聞こえた。
「お手合わせを。」
「がんばってね、二人とも。」
ビアンカと蓮は観覧室のようなところで二人の様子を眺めている。
「始めっ!!!」
蓮の合図で試合が始まった。
間髪入れずに瑞は剣をクロエに翳す。
『ーシールドー
!っ…』
あまりにも強く重い一振りにクロエは顔を歪める。
『ー地龍ー』
瑞が身を引いたと同時に、“地”の属性を発動させる。
地は水に強く、火に弱い。
火は地に強く、水に弱い。
水は火に強く、地に弱い。
風は風自身に弱く、強力だ。
光は闇を制し、
闇は光を制して互いに打ち消し合う。
時はすべてを司り、
この世で時に勝るものはない。
「三つの属性を使うと聞いていましたが…。
ひとつは地ですね。」
瑞は、クロエを探る。
クロエは、地龍を巧みに操り瑞を呑みにかかる。
地龍が通るところはすべて、ヨウテスの得意とする針山のような“地柱”で覆い尽くされる。
もう少しで瑞に刺さるというところで、
魔法によって弾かれた。
「ー水よ我に従えー」
瑞は、どこからともなく大量の水を出すと訓練室を覆い尽くした。
「ー氷結ー」
地柱は瑞の魔法によって固まる。
海のように溢れていた水が、
瑞の手が触れると同時に凍ったのだ。
『!?』
「ー力魔法ー」
更に続けて瑞は攻撃を続ける。
持っていた剣を氷河に突き刺した。
すると、
固まっていた氷がまるで地柱のようにクロエの方へ鋭く尖り直進する。
『ー炎龍ー』
炎龍が召喚されると共に、
氷を溶かし、
マグマが吹き出してきた。
「ふたつ目は火ですね。」
瑞はそう言うと、また波を呼び出してマグマを消滅させる。
『ー光炎ー』
クロエは、次の策をうつ。
光と炎の合わせ技。太陽と同じ光を発し、
相手の目を眩ませる。
瑞は、堪らず目を腕で庇う。
『ー水龍ー
彼を呑め。』
水の龍が瑞を呑み込む。
強い水圧は、瑞にとってなんの苦でもなかった。
「…何の真似ですか。」
『ー雷龍ー』
突如、瑞に雷撃が落ちる。
感電したのだ。
瑞が地面に倒れた。
「クレアの勝ちね。」
「そうかしら?」
ビアンカは、楽しそうに笑う蓮を見る。
どう見ても負けだろうと言いたげだ。
クロエは、ゆっくりと地面に降りると瑞に近づく。
クロエの杖は、剣に変形していた。
『終わりだよ。』
剣を振り上げると同時に、
瑞はクロエを押し倒し床に剣を刺した。
「甘いですよ。クレアは純粋ですね。」
瑞は、この世の女性の心を鷲掴むような妖艶な笑みを浮かべた。
『っ』
鱗のようなものが頬の辺りで光ってすっと消えた。全身を鱗で覆いダメージを軽減したのだろう。
「ほら、瑞の勝ち。」
蓮は、にっこりと
ビアンカの方を向いて笑った。