太陽と月の後継者
「あぁ…よく似ていたから間違えたよ。」
皆はそうだよなと納得した。
レイに似ているようで似ていない。
口は笑っているが、目は笑っていない。
クロエは観察されるような視線を向けられて気持ちが悪くなった。
「どうした。
食べようじゃないか。」
ビアンカやクロエは毒や何らかの魔法がかけられていないかと疑ったが、
食べるしかなかった。
フォークとナイフを手に持ち、
口に入る瞬間。
ふと、食事をまだ口に運んでいないリオが口を開く。
「レオン様、疑いたくはありませんがこの食事から睡眠薬の匂いがします。」
ぎょっとしてナイフを全員が置く。
と言っても、ルカはフォークすら持っていないし皆口に運んでいない。
「クックックッ、流石次期族長だ。」
「…どういうつもりですか?」
リオは、敵意のこもった瞳を向ける。
「試したのだよ。
これからの未来を担ってもらう君たちを。」
すると、近くにいたメイドや執事が倒れた。
「え…」
ビアンカやヨウテスは呆然とその様子を見る。
「…君は、誰かが殺されたところを見たことがあるか。」
(何でそんなことをきくの?)
クロエの方を向いて
レオンは質問をする。
「…っいくら六大貴族といえど配慮に欠ける質問はどうかと思いますよ。」
ヨウテスが少し低い声を出すが、レオンはその視線を逸らさない。
その空気に耐えられなくなり、クロエは冷めた声で答えた。
『…はい』
空気が一気に張り詰めた。
「どんな感じだった。」
(いやだ)
『…血が広がっていて、惨かったです。』
ビアンカは口を抑える。
「それは、誰だ。」
『言えません。』
「誰だ?」
『……お母様です。』
辛そうにクロエは言う。
全員、クロエの言葉に驚いた。
「他にもいるだろう。」
休む暇も与えてくれない。
抉るような質問ばかり。
「もういいでしょう!」
痺れを切らして、
ビアンカは声を上げた。
「…知っているか。
天羽はだいたい、150年に1度現れる。
だが、かれこれ1000年程発見されていない。
それは、1000年も天羽が生き延びているという事だ。」
クロエは、自分の事だとギクリとした。
更にレオンは続ける。
「そして、最近。
長年の研究によってわかっていることなんだがな。
天羽の持ち主の魂は
今までいた全ての天羽と同じだった。
言っていることがわかるか?」
ビアンカとリオはクロエが天羽ということを知っている。
その話を唇を噛みながら聞いていた。
レオンは、全員に問いかける。
「…天羽は、一人の人間で、
転生したとしても、ずっと天羽。
天羽は、前世も天羽、後世も天羽。
今まで酷い死に方をした天羽は、
全て同一人物…
ということですか?」
ヨウテスは、さっと答える。
「そうだ。」
(だったら私は…
あの夢の中の少女の生まれ変わり。
全部、全部、全部…)
『私だ。』
相当なストレスを受けたのか、抜け殻のように、真っ青な顔をしたクロエが呟いた。