太陽と月の後継者

あの後いろいろと反対されてしまったようだが、頑なにして押し切られビアンカとリオ、ヨウテスは黙って見守ることにした。

最近まで押しの弱いクロエだったが、
いつの間にか頑固になっている。

強くなっている。

力も、心も。

ーコンコンコン

「…ラル、入るよ。」

ベッドの上に、
儚げに窓の外を見る少女。

ダークブラウンの胸までの髪と
赤の瞳はキルそっくりだ。

吸血鬼で体が弱いなんて、聞いたことないが…。

「俺とラルは、小さい頃に親に捨てられたんだ。幼かったラルはその現実を受け止められず、この有様だ。

精神的病っていうやつだよ。」

ラルは、クロエの臭いに反応してかこちらを向いた。

「珍しいね。お客さん?」

「うん。
ラルを助けに来てくれたんだ。」

頭の上にクエスチョンマークが見える。

わかりやすい可愛い子だ。

クロエは、先程抜き取った血をラルに手渡した。

『飲んで。

楽になるよ。』

リオ達は神妙な面持ちで見守る。

「…」

吸血鬼の本能を刺激するかのような甘い香りが鼻を刺す。

何時も食事を取ろうとしなかったラルが飲んだ。

ーゴクッ

「…美味しい。」

驚いたようにいうラルは、目を鋭く光らせて飲み干した。

「…こんなの初めて。

小さい頃に戻ったみたい。」

体中から力が溢れ出し、
正常に脈打つ感覚がする。

遂には床に足をついて立ち上がった。

「キルっ!立てたっ。

見てっ!」
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