太陽と月の後継者
『あの御方って...?』
「クロエ様のすぐ近くいる。」
キルアはそう言うと綺麗なペガサスになった。
シルバーとゲーテは本当の姿を知らないために目をこれでもかと言うほどに開いていた。
エルも不死鳥になる。
その姿は想像以上に大きかった。
『ついて来いって!』
「あ、あぁ」
クロエ達はキルア達を追いかけて空を飛んだ。
見えるのはあり得ない絶景。
いろんな地が空に浮き、大きな滝が幻想的な虹を作り、雲が降りてきている。
全ては太陽の光を受け煌めいていた。
そこには完全体のドラゴンや精霊、見たこともない生き物が行き来していた。
エルが急降下していく先には、一つ水の中に浮かんだ綺麗な島。
『わぁ...』
マングローブが広がり、その中にたくさんの精霊。
その中心にはキルアがいた。
ペガサスになったキルアは綺麗な島に行くと羽を休めた。
エルは人の姿になると赤い果実を手に取った。
クロエ達も島に降り立つ。
「皆クロエ様のことを歓迎している。
...シルバーにゲーテだな。お前達は特別だ。」
「ありがとうな、俺たちを連れてきてくれて。」
キルアは人の姿になると二人を睨んだ。
「勘違いしないで。私たち、クロエ様とあの御方以外の者嫌い。クロエ様の家族殺した。この森燃やした。仲間連れてった。許さない。」
全員の表情が歪んだ。
シルバー達には罪がない。分かっているのだが容易に許せるはずがない。
それを聞いてシルバーは口を開いた。
「お前達とは真逆だが、
俺も少しその気持ちは分かる。」
キルアは突っかかろうとしたがエルが止めた。
「俺は魔獣と人の子だ。
物心ついたときには何処かの地下室で研究所にいた。数年そこでの拷問に耐えていが限界を悟った俺は逃げ出した。逃げるときに何度か人を殺した気がする。
逃げて逃げて、気付けばそこには俺一人だった。
五大魔法使いのイズミ様に引き取られた時に頼んだんだ。
俺はいつか完全に魔獣化する。
その時が来たら...来る前に殺してくれと頼んだ。
見てくれ。」
服の袖を捲りあげ真っ黒に変色した肌を見せた。
「俺の家族は研究所で死んでしまった。魔獣だったとしても俺の親だから殺したヤツらを許せなかった。
お前達の仲間もあんな拷問に耐えていたのだとしたら今も腸が煮えくりかえりそうだ。」
シルバーは顔を歪めると服の裾を戻した。