太陽と月の後継者
夜も更けた頃、リオ達はクランが幽閉されたと聞いて上級魔法使いの本部に避難したアキの元へ訪ねた。
アジトにはまだ神官が彷徨っていて帰るにも帰れない。
0のメンバーとリオ達は普段入れない幹部室に案内された。
そこには五大魔法使い達も居る。
「クレアは無事なのか!?」
ヒルダの悲痛な声が部屋に響く。破頭隊隊長のトウハは冷静に分析している。
「今はまだ神官にそういう動きは見られない。だが、神官と朱雀族が繋がっているのは確かだ。もし彼女が彼らに捕まってしまえば世界の崩壊は目に見える。」
わかりきったことだが、部屋は静寂に包まれた。
「一つ、疑問点がある。」
「疑問点...だと?」
ヒルダは目をぎらぎらと輝かしてトウハを見る。
「神官たちはクロエへの敬意を持ちつつ封印することで周りの強欲な者から彼女を遠ざけ彼女を守ろうとしていた。
どうだ、矛盾していないか?何故朱雀族は執拗にクロエを追いまわす。」
リオはその言葉に反応した。
「彼らは朱雀族の本当の目的を知らない...。」
トウハはしたり顔を見せる。
そんな彼をヒルダは怪訝そうに目を細めた。
「流石だリオ・クラネス。
ヒルダ、気付かないか?
それを神官に伝えて納得させられれば、彼らは朱雀族をただでは済まさないはずだ。
こちらの手駒に加えることができれば...。」
ヒルダはそう言われると口元に大きな弧を描く。
「後は我らの思い通りってことか。」
トウハは深く頷いた。
ビアンカやリオ達は顔を見合わせて頷き合う。
そこにシドが声を上げた。
初めて声を聞いたリオ達はその嗄れた声に背筋をぴんと伸ばす。
流石の死神隊隊長、百歳に近い彼は迫力も違う。
「早くせねばいかぬ。
そしてこれが我の最後の戦いとなろう。
我に行かせてくれ。
神官長とは昔のつきあいがある。」
またもやヒルダの声が部屋に響いた。
「やめろ!クランが捕まり五大魔法使いは弱ってきている。これ以上の負担は...。」
「それなら心配ない。
入ってこい...エルメス。」
エルメスという声に大きく反応するリオ達。
部屋に入ってきた彼を見ると、全員が息をのんだ。
癖のある金髪に銀色の瞳。
見惚れてしまうほどの美しさを持った、
預言者
“Michiru”
誠の名をエルメス。クロエを覚醒までに追い込んだ強者。
「我の孫だ。必要な魔法は全て覚えさせた。
エルメスに全てを任せる。」
イズミは分かっていたように頷く。
「彼の力は我が認めよう。」
その言葉に五大魔法使いが渋々頷いた。
「そして、0の隊長はクランから聞いている。
俺はもうすぐ死ぬとも言い残していた。新たな0の隊長は...
クロエ、
彼女に託したと。」