太陽と月の後継者
長い長い沈黙。
数分に感じられもする、何時間にも感じられた。
「よかろう」
イズミの声が響くと同時に、時はまた動いた。
「しかし、クロエはまだ...」
「ヒルダよ、我らはもう潮時だ。
次期世代に託しても良いだろう。
そして、そやつらをこの戦いで従えるのはお前だ。」
イズミの真剣な瞳に見つめられヒルダは声が出せなかった。従えるとは、五大魔法使いの長になると言うことだからだ。
「ヒルダにトウハ、そなた達はまだ若い。
我らは孫のように思っている。
最後の頼みだ...わかってくれるか。」
愛に満ちた瞳で見られたヒルダは断れるわけもなく頷いた。
歴史的瞬間を目の当たりにしたリオ達は唯々黙ることしかできなかった。
シドはまた声を上げた。
「エミリアを建てたのはクランと我らの祖先...我らは親族だ。
今まで言っていなかったが...
彼の本名はクラン・エミリア。
そして孫の本名もエルメス・エミリアだ。
クロエと共に聞いて欲しいことがある。」
シドはそう言うと、最後の別れのように深々とお礼をして神官の元へ消えた。
「馬鹿が...話す気もさらさらないだろうが...。」
ヒルダはそう言うと悔しそうに近くの椅子へ座った。
リオ達の表情は険しく、エルメスも何処か寂しげだった。