太陽と月の後継者

ーバシャン

川辺に大きな音が響いた。
その音を聞いて近くの者が駆けつける。

「クレア...っ!!!いったい何が。」

そこには幸いなことに蓮と瑞がいた。

焼け焦げて服がぼろぼろになり綺麗な肌が露わになる。
天羽の治療能力のおかげか肌には傷一つなかった。

シルバーも魔獣の血のおかげで無傷。

キルアやエルも治療能力は長けている。

だが、ひとりゲーテは治療能力がない。

本人は牢獄暮らしで慣れている物の、周りにとってはとても痛々しかった。


『(許せない……!!!)』


けれどそんな悲痛な叫びを口にする資格は自分にはないとクロエはきつく唇を噛んだ。


『……急に現れてごめんなさい。私のことはクロエって呼んでよ。』

「そうね...クロエ...だったわね。

瑞、至急手当を。

服も用意して...

場所もここではすぐに見つかるわ。」

『迷惑はかけられない。私たちは本部へ行く。』

蓮は悲しそうにした。

「私達は同盟を組んでいる。

私は誇り高き六大貴族よ。

もっと頼ってくれてもいいじゃない?」

違う

とクロエは叫びたくなった。

もう誰も傷つけたくない。

だがそれは許されない。

彼女が生きる以上犠牲はつきもの。

弱肉強食のこの世界は酷く憎たらしく思えた。

『...じゃぁ、少しだけ』

クロエは手を取って屋敷の中へ入った。

温かい食事をむさぼるゲーテ達。

クロエも温かい食事に食らいつく。

「これからどうしますか?

蓮と私は何処までもついて行く覚悟です。

水の部族は何時でも戦える準備ができています。

先ほど、他の部族に呼びかけたところ、戦闘準備は完了したとのことです。」

瑞は安心させるように笑った。

蓮もそれにつられて笑う。

「ふふっさぁ私の手を取って。

見てほしいものがあるの。」

クロエ達は手を握った。
皆不思議そうにしている。

「ーループー」




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