太陽と月の後継者
ーガキンッ
鈍い音が響いた。
今は戦闘中、生死をかけた世界戦争。
誰一人ふたりのことには気付かない。
次の瞬間には地を鉄が滑る音が聞こえた。
『どうして私を騙さなかったの?』
「十分騙した。」
冷たいレイの声にクロエは悲しそうに彼女を見た。
先ほどの鉄の滑る音はレイの武器が割れた音だった。
『私は信じてた……そのこと、分かってたよね。レイだもん。』
彼女はいくらでもクロエを浚えるチャンスがあったのにも関わらずそれをしなかった。
「相変わらず反吐が出そうなほど甘い脳してるな。
まぁ、あんたを捕まえる為に生まれてリオ達と仲良くなった。
少しだけだが...お前達ともっと居たいって思ったよ。」
レイは本心からの笑顔を見せた。
だがその顔は厳しい表情に変わる。
「だが、私とお前は決して交わることのない種。ここで終わらせよう。」
鞘からもう一本剣を取り出したレイ。
最初で最後のふたりの戦い。
『一つだけお願い、
私の名前を呼んで欲しい。』
クロエが杖を地に着くと同時にレイは戦闘を楽しみにするような表情で言った。
「クロエ」
ーバキバキ
またもや地に亀裂が入る。
その衝動で周りに居た敵は吹っ飛んだ。
レイとの力の差は歴然。
『ー水龍ー』
「ー炎弾ー」
勝負は一瞬だった。
『レイありがとう。』
うつろな表情の彼女に呟く。
「やっと...」
そういった彼女は一筋の涙を流していた。
ードスッ
鈍い音が響く。
クロエはとどめを刺すことをせずに気絶させただけだった。