太陽と月の後継者
『おかあさま見てー!きれいなお花の冠ができたの!』
「フフッ…綺麗ね。あなたによく似合っているわ」
『うん!でもこれはおかあさまのために作ったの。…ほらやっぱり!女神様みたいでとーってもきれい!』
少女には家族がいた。幸せを絵に書いたような家族。そんな家で育った少女はすくすくと元気に育った。そんな家族を村人達もあたたく見守っていた。
しかし
少女が16を迎えた夜、悲劇は始まった。
昼間はいつもと同じように、母と共に買い物に出ていた。
ありふれた幸せな日々。そこまではまだ狂っていなかった。
そう “そこまで”は…
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帰宅した彼女とその母は夜の宴の準備を始めた。
そして運命はこれから先に起こる不穏を示すかのように軋んだ音をたてて動きだす。
『お母様!この荷物はここでいいのよね?』
何度呼んでも返事は返ってこない。
『お母様…?』
作業に夢中になっていて気付けなかったのだ。ある“異変”に…。
不安になって自分の母を探そうと階段に足を運んだその時、彼女は気付いた。
微かに感じる人の気配、それは自分の母ではなく 他の“何か”という事。
そして、鼻を覆いたくなるほどの“血”の香り。
その香りが更に不安を掻き立てる。
階段を登りきり恐る恐る周りを見回して絶句した。
『お…か……さ……お母様っ!!!』
なんと目の前には元の面影も何も無い母の亡骸。ただ、血の海が広がっていた。
噎せ返るような香りと吐き気にその場に座り込むと人影が血溜まりにうつっている。
顔を上げると、目の下に十字架が掘られた奇妙な男が立っていた。
『貴方が…お母様を………?』
男は奇妙な笑みを浮かべ彼女の額に手を置いた。
「そうさ、可哀想な姫君。
貴方様は天から落とされた“神ノ子”。
その美貌も力も、血も、すべてを世界のものが欲している。世界の規律を乱すものは、我らが抹消しなければならない。
だが、貴方様は不死身。だから永久に眠って頂く。」
突然言われた言葉に彼女は酷く混乱した。
それもそうであろう
彼女は何も知らない。
自分が何者なのか。
何故存在するのか。
何の意味があって母が殺されたのか。
可哀想な姫君
ただ一つわかるのは、
『私は…もう普通には暮らせないの…?』
それだけだった。
「貴方様に一つだけ教えて差し上げます。
貴方様はーーーーーーーなのです。」
そこで彼女の記憶は終わった。