太陽と月の後継者












「どうだ、我の物になれば全て片付くぞ。」

耳元でささやく声が嫌に染みつく。

「仲間を助けたいのなら、我の手を取れ。」

クロエは唇を噛んだ。
唇から血が出てきて口に滲み出す。

「クロエ行くな!!」

(システィスやヨウテスの叫び声)

「いやぁあああぁあっっ!!」

(ビアンカやビオレの悲鳴のような叫び。)

「行っても誰も助からない!!!」

(リオや瑞の精一杯の叫び。)

焼けて荒れ果てた街を一人の女と赤い髪の男が見据える。

全部夢の通りで笑ってしまう。

『最後だけは、守らせてよ。』

皮肉を込めていったクロエ。

片目から涙を流す彼女は言葉とは裏腹に助けてと言っているようだった。

だが彼女はまだ諦めていない。

『レト』

レトは彼女の小さな小さな声にも反応する。

目は苦しんでいる。

『好きだよ』

そう言った彼女は扉の奥に消えていった。

「くっそぉぉおおおおおおッッ」

レトの怒りに満ちた声は大きく響き渡った。


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