太陽と月の後継者
そんな時だった。
ライトがビオラを宥めていた直後、屋敷から火に丸呑みされた神官が這いつくばったり駆け出したりして逃走を図っていた。
屋敷の中からはレオンの笑い声が聞こえる。
逃げて神官達に追い打ちをかけるように朱雀族がそいつらを斬っていた。
「始まった」
大きな亀裂が両者に入るとそれは一瞬で砕けた。
瑞はぽつりそう呟くと、悲痛そうにその場を見ていた。
ほとんどが片付いたとき、一人の神官が幸いなことに逃げ出してその場に倒れている。
それにライト達は走り寄った。
「信じていた一番近くの者に裏切られるとは....。
我らは間違っていたのだ。
シドの言うとおりだった。
これは神から与えられた天罰なのかもしれん。
すまぬ。
許してはもらえぬだろうがな。
彼女に謝って欲しい。
クロエ様にすまぬと伝えて欲しい。」
そう言うと、神官は息を引き取った。
静まりかえったその場に、また悲鳴が屋敷から響いた。
よく見ると、大きな✕印の上にクロエが貼り付けにされている。
「クロエっ」
「クロエ様!?」
「なんと言うことを...。」
一気に場がざわついた。
そこにレオンの大きな声が響く。
「よく聞け...!
我は全てを手にした。
我は神同様の力を得たのだ....!
新しい世界を我が創造するのだ。
彼女には最大の恩返しが必要だ。
捕まる前に彼女は皆を救って欲しいと言っていたがそれを実現しよう。」
クロエは何を企んでいるのだとレオンを鋭く睨んだ。
彼は恐ろしい笑顔を浮かべると大きな声で言い放つ。
「お前達を救ってやる...!
この生き地獄からな。
そして新しい世界を創造する!!!」
低い低い声が響いたと同時に皆は身構えた。
次の瞬間、地から巨大な蔓が伸びてきた。
それに触った者達はたちまち塵となって消えていく。
そんな様子に全ての者が恐怖した。
動く蔓はだんだん大きくなっていき人々は浮遊魔法を使って大空に避難した。
ヒルダが全員に指示を出す。
ヨウテスはリオを抱えて飛んでいた。
「絶対にこの植物のつるに触れるな!!これは魔の植物だ!触れれば一瞬で塵になるぞ!!!
特攻隊は先陣を切れ!火と光の属性のものは焼き払え!
それ以外の者はクロエの救出に専念せよ!」
炎の属性の者は次々と焼き払う。
幸い世界一人口の多い属性。
植物は数十分で焼き払えた。
ードンッ
クロエとレオンの前に一人の男がたどり着く。
『シルバー...!』
その早さにレオンは感心したように笑う。