太陽と月の後継者

宮殿に足を踏み入れた彼は彼女の手を取りそっと口づけをした。


「やっとお会い出来ました。」


そう言った彼の目は、愛しいものを見る目。


「俺はずっとこの日を待っていました。」


彼は少女の額に手を伸ばし、そのまま口付けた。


「お目覚めの時間です。」


そう言うと、彼女に向かってなにかを念じそのまま去って行った。


直後にその何百年もの間閉ざされていた重い瞼が開かれ、紅の瞳と碧の瞳が露になる。ゆっくりと上体を起こし、地に足を付けた。


ふらりと立ち上がると、腰まで伸びた白金色の少しウェーブした髪をかきあげる。


『行かなければ』


凛とした声が響くと、太陽が待ちわびていたかのように彼女を照らす。


彼女はよくわからない衝動に駆られ宮殿を飛び出し、森に走り出した。


自分が何故走り出したのか、分からぬまま、ただ本能の赴くままに走る。


直感的にここにいてはいけないと思い、走り出したのだ。
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