太陽と月の後継者

王の部屋を出たクロエは、城を出て、愛する夫、レトの待つ馬小屋へ向かった。

馬の後ろに、エドを抱いたクロエを軽々と載せてレトも馬に跨るとある男が現れた。


「アルト!?」


レトが驚きの声を上げる。

王国騎士団の第二の腕と称され、六大貴族の妖精族第二子であるアルトが二人の目の前へ現れたのだ。


「お待ちください。」


「止めないでください。」


クロエは、アルトに願う。
アルトはその気がないように、
王からの言葉を述べた。


「私は、国王様の御命令、そして私の意思で姫君、レト様に仕えることを選びました。」


「それは…」


「御願い申し上げます!!!」


アルトは熱のこもった瞳で二人を見つめる。


「わかったよ」


「レト!?」


「アルトは決めたら曲げない性格なんだ。」


そうして、二人はアルトを連れて四人で小さな豊かな村へと移った。







その日の明け方ベルト王はその生涯を終えられた。


王は笑っていたという。








レトは「新鮮でいい」と言って、農業を頑張っていた。

アルトは、クロエが買い物へ行っている間、
エドの世話に手を焼いていた。

四人とも幸せそうに、アルトも家族のように
親しくなっていた。




それから早18年の月日が経つと、
エドは村の優しい娘と結婚した。

だが、その幸せすら長く続かなかった。

ある朝、クロエが目覚めると家は、村は燃えていた。

まるで、
かつて夫を失った日のように。

クロエは近くにいた
ひどい火傷を負ったアルトに聞く。


「アルト…!その傷っ……レトは…エドは…!?」


「レト様はもう…」


アルトは、
手に持っているクロエとレトの結婚指輪を見せる。

クロエは頭を何かで殴られたような感覚に陥った。


「え…エドは…。」


「エド様は…エド様は攫われましたっ」


クロエの過去を知っていたアルトは普段歪めることの無い、その綺麗な顔を歪めた。


「エドの…私の義娘と孫を死守して。」


クロエはアルトにそう言うと、立ち上がる。


「クロエ様は!?」


「私は…隣国の王の元へ。」


隣国の王は、この悲惨な負の連鎖を生み出した主犯だ。


「これは姫としての命令よ。必ず守って。」


「っ!…はい!!」


アルトはそう言うと、エドの妻の元へ走りだす。


「解放」


姿が見えなくなったことを確認すると、
クロエは最大解放をする。


空を飛んで隣国へ向かうクロエに次々と攻撃が仕掛けられ、それを物ともせず城に向けて火を放った。


「よくも私の夫を、娘を、
…息子を返せ!!!」


隣国の王は見るも無残なエドの姿を見せる。


もうそこに、この世界に、
エドは、レトはいない。


「滅びよ」


真っ赤に燃えるような紅の瞳と、
慈愛に満ちている母の碧い瞳。

白金に輝く絹のような美しい髪。
七色に輝く属性の玉、
クロエを見て人々は、
彼女が神の化身なのだと気付く。

今更ながら、後悔の念に呑まれる隣国の哀れな王。

彼女は、神の子。

その後、炎と憎しみと共に消えていった。

人々はそんな彼女を

「太陽と愛の神 “クロエ”」

と呼んだ。

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