太陽と月の後継者

「ふーん…朱雀族の…。

よし、じゃあクレアはその子のことを監視してくれないか?」

クランの言葉に、全員が押し黙る。

断ると思っていたのだろう。クロエの言葉に驚く。

『わかりました。』

シルバーは、心配そうに見る。
アリスもクロエの服の裾をぎゅっと掴んでいた。

「クレアならそう言ってくれると信じていたよ。」

クランは笑顔を浮かべた。

「それにしても、なんで今回は3人も同じ任務に付いているんだ?」

「これは、クレア自身にも
関わりそして世界の規律にも
関わってくることなんだ。」

『私自身に?』

「気になるなら、自分で調べるといいよ。
じゃあ、お願いするね。」

クランが部屋を出ていくとシルバーがソファーを蹴る。

「あいつ、なんであんなヘラヘラと…。」

「…なんでもいいですが、
周りに被害を与えないで頂けませんか?」

コウは、膝に零れた紅茶を拭う。

「……」

シルバーは、ひとりがけのソファーにどかりと座る。

「まぁまぁ、クランにもいろいろあるんだよ。

じゃ、私は任務の方に
行ってくるな。」

アキがそう言って出ていくと、
クレアも部屋を出た。

0にある自分の部屋の窓から外に出る。

見渡す限りの雲の海。クロエは好奇心から浮遊魔法で0の敷地を出た。すると、綺麗な城のような屋敷が見える。

『妖精族の屋敷だ。』

屋敷の周りを飛んでいると、綺麗な白色の髪の少女が目に入った。

「!だれっ」

少女は、こちらを向いて固まる。敷地以外の人間に会うのは初めてなのだろうか?

『私はクレア。貴女は?』

「…ビオラ」

顎までの透き通った白い髪と金色の瞳をした少女は、真っ白なワンピースを身にまとっていた。

声までも澄んでいる。

「どうやってここへ来たの?」

『それは秘密。』

「…クレアも私に内緒事をするんだ。」

少女の表情が曇った。この子はきっと妖精族の子だと判断する。森の木陰から、小さな精霊がビオラに呼びかけた。

「そう…この人が?」

ビオラは精霊と話ができるらしい。

その声は、
何故かクロエにも聞こえた。

“この方は私たちの源”

“歓迎しなきゃ”

“歓迎しなきゃ”

精霊達の楽しげな声が聞こえる。

『クスッ…ありがとう』

“笑った”

“笑った”

「…!この子達の声が聞こえるの?」

『?うん』

ビオラは、楽しそうに声をあげた。

「精霊の声を聞ける人、
妖精族以外に初めて見たっ。

付いてきて。」

ビオラは、クレアの手を引いて屋敷に向かって飛んだ。

クレアも浮遊魔法で飛ぶ。

扉を開けても外の光が中に入ってくる開放的な城。

いや、ここはまだ外か?と迷うほど外との仕切りがない。

天候に左右されない空の城だからできる仕様だ。

「お兄様!」

目の前には、
綺麗な白い短髪のビオラと同じ目をした青年が立っていた。

「初めまして、クレア。
私はビオラの兄のライト。」

長身で細身の彼の瞳には、
しっかりとクロエが写っていた。

『私の名前…』

「精霊達が教えてくれたんだ。
貴女がどのような人か…
私たちにとって、貴女は大切な人だ。

妖精族の領域へようこそ
クレア・フルーム
君を歓迎する。

エミリアの姫君よ。」
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