りんごのほっぺ



那智さんは辺りを見渡し始めると首を傾げてまたとんでも無い事を口にした。



「おい、ここはどこだ」



今まで無心で歩いてたと言うのか。目的があって歩いていた訳じゃないのか。

突っ込みどころが多すぎだよ那智さん。



「…こ、ここは、1年生の階です」

「1年だと?いつになったら3年の階につくんだよ」

「…えっと、その、階とかじゃなくて。3年は隣の棟なのでこっちの棟じゃないんです」



そもそもここは新校舎であって、3年生は隣の旧校舎にある。だから那智さんは新校舎に迷い込んでしまったのだ。



「何だよそういう事か俺は騙されてた訳か。そりゃいつまでたっても俺のクラスにたどり着けねえわな」



怒り出すのかと思ったけど意外にも素直に受け止めてくれた。誰も那智さんを騙してはいないけど…。



「じゃあ早くその旧校舎まで案内してくれ。俺は謝らねえといけない事があんだよ」



謝らないといけない事?那智さんは何か悪い事をしてしまったのだろうか。

…まあ、見た目からして謝らないといけない事の1つや2つは余裕であるんだろうけど。



とりあえずその理由は置いといて那智さんを旧校舎まで案内する事にした。



一緒に歩くのもどうかと思ったので後ろからついてきてもらうという形を取る。



チラチラ、チラチラ、那智さんがちゃんとついて来ているかの確認も欠かさなかった。

ああ、なんて奇妙な絵面なんだろう。
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